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今回の海外犬舎訪問はオーストラリアのエアデール界の有名犬舎OLD IRONです。OLD IRON犬舎のオーナーの Anneさんと Ronさんご夫妻にいくつかのインタビューをしてみました。ご主人のRonさんはエアデールテリアクラブオブビクトリアの会長でもあります。彼らはそれぞれの仕事からリタイアした後、およそ12万坪の広大な敷地の中で、愛すべきエアデール達と悠々自適の生活を送っているようです。羨ましい限りです。 杉本武巳

Q1.家族構成とどのような環境にお住まいですか?
私は英語の教師をリタイアして、その後いつも犬達と一緒に沢山の時間を過ごしています。私の夫のロンは、輸送プランナーかつビジネスマネージャーという職をリタイアしました。私たちには3人の息子がいます。二人は土木技師で、一人は物理学者です。彼らはそれぞれ自分たちの家がありますが、定期的に私たちを見てくれています。

私たちの家はメルボルンから50km離れた100エーカー(およそ12万坪)の森の中にあります。所有地の周りはナショナルパークで囲まれていますから、お隣さんはいません。所有地の真ん中にはフェンスで囲まれた2エーカー(約2400坪)の犬のためのエリアがあります。フェンスは6フィート(1.8m)の高さのワイヤーフェンスで、3フィートの高さまでは猛毒のヘビが入れないように大変細かい質のワイヤーになっています。この犬たちのエリアは草が短く刈られ、ケンネルと同じように運動場がたくさんあります。それぞれの運動場に砂場があり、犬はそこを掘るのが大好きです。

Q2.貴方の日常の生活パターについて教えてください?
私はまず朝一番、最初に仔犬の世話をして、彼らの母犬を外の運動場に出します。私たちは通常1年に3回繁殖します。産室はベッドルームとは離れていて、仔犬が大きくなるにつれて、いつでも外に出すことができるように犬専用のドアを付けてあります。

仔犬が生まれていない時には、Justis(Ch Old Iron Just Awesome)は私たちの部屋で寝ています。仔犬たちの世話をした後で私たちは外に出て、ロンが最初に2頭のノーフォークテリアをケンネルから運動場に出します。そこはエアデールのいるところからは家を挟んで反対側になっています。

エアデールたちは6つの運動場付きケンネルを持ち、それぞれ2カ所の寝る場所があります。現在では私たちはそのうち4つを使っています。どの犬も日中ケンネルだけで過ごすことはないので、ケンネルはいつもきれいです。
彼らは外へ出る時は、メインの運動場へすべての牝がいっしょに出されますが、2頭ずつになって草のある運動場へ行きます。彼らが運動場に出された時に一番最初にすることは、急いでフェンスのところまで行って、カンガルーを見つけて吠えることです。
次に私たちは犬に食事を与え、ケンネルの掃除をして産室のベッドを取り替えます。今現在、私たちは5ヶ月未満の仔犬を5頭世話しています。そのうち2頭は交配返しで来た仔犬です。

Q3.一週間のスケジュール
私は週に多くの予定があります。水曜日は来客のトリミングの日です。もし誰かトリミングを手伝って欲しい場合は水曜日に来てもらうようにしています。金曜日はマッスルセラピストの専門医のLyn Mawsonが訪れる日です。彼女は現在ショーイングしている犬をマッサージし、ランチタイムには仔犬たちをチェックします。

私は最高のグルーミングをひとりになってすることが好きです。そのため、ショーに出す犬のトリミングは、週の間コートがどのように伸びてくるか見ることができるように普段は火曜日にすることにしています。そして週末にかけて必要に応じて手を加え、土曜日頃にはほとんどパーフェクトな状態になっています。

 

 

Q4.日常のトレーニングについて
仔犬たちが8週間を過ぎると、彼らに実社会を見せるようにしなければなりません。そこで、彼らを全員ショッピングセンターやマーケット、コーヒーショップへ週に2,3回は連れて行きます。ショッピングセンターへ行くには少なくとも車で25分はかかるので、それは時間を取られる仕事です。

仔犬のトレーニングは、手の中におやつを入れて教えています。私の前に立たせたり、後ずさりさせたり、吠えたり、ジャンプしたりなど色々なことを覚えさせます。それらはすべて普段の生活の中でちょっとした時に教えるのです。
私たちは仔犬に教えるためにあえて10分間リードをはずして歩かせます。この時に仔犬の名前を呼んで、彼らが私の前に立った時にすかさずおやつを与えます。彼らは好き勝手に歩きながらもそうやって色々な事を覚えていくのです。
私たちはまた成犬達にもそれぞれ3.5kmの距離を歩かせます。

Q5.現在何頭の犬がいますか
 「犬は何頭いるの?」と聞かれた時は、「ほぼ10頭」と答えるようにしています。我が家には、うちで出産させた仔犬と母親を預かったり、交配のために牝犬が来ていたり、色々な理由でいつも沢山の犬のゲストがいるからです。

Q6.貴方とエアデールの歴史は?
私の曾祖父はイギリスでエアデールを繁殖していました。彼の娘、つまり私の祖母はオーストラリアへ引っ越し、エアデールをファミリードッグとして選びました。私の両親もエアデールが最高だと思っていましたので、子どもとして姉や私はエアデールか、それとも何も飼わないかの選択しかありませんでした。

私たちの3番目のエアデールのサムは、私が13歳の時にペットブリーダーから1964年に購入しました。サムはトレーニングの本に載っていた全てのことができました。すわれ、はなせ、転がれなどはもちろんのこと、死んだ真似や、鼻の上にビスケットを乗せてOKが出るまで待っていたりしました。私がサーフィンをしているあいだ、私の服を守っていたものです。彼がサーフィンを覚えるまでの事ですが。サーフィンのボードはエアデールを前に乗せるぐらいの余裕があるのです。私はサムが世界中で一番優れた犬だと確信し、ショーに出すことに決めました。

Q7.ショーとトリミングについて
私の最初のショードッグ(Ch Sunbuda Sam)は、彼の父犬のオーナーによってバリカンで刈られていました。私はハンドクリッパーで手入れしていました。それから、バリカンを使うことを止めてきちんとストリッピングナイフを使うようになったのです。
私は写真を見て勉強しましたが、私のグルーミングが大きく前進したのは、義父がスムースフォックステリアを買った時に、スムースフォックステリアのすばらしいブリーダーであるアラン ベイリーにレッスンを受けてからでした。

私のこれまでのエアデールのグルーミングは、ただ単に正確に抜くことだけにとらわれていました。これに対して、スムースのグルーミングは全体のアウトラインを如何に正確に作るかがポイントです。まさに青天の霹靂でした。
グルーミングのレッスンを受けたければ、スムースのブリーダーを尋ねてみるといいでしょう。イギリスのアーネスト シャープのような偉大なトリマーは、細かく見れば一見ラフな仕上げですが、アウトラインはアメリカの最も上手なグルーミングと同じように、実に見事なものでした。私は自分の犬はすべて自分でトリミングします。また喜んで他の犬のトリミングもお手伝いします。

 
Q8.ハンドリングはどうしていますか?

私はこれまでいつも自分の犬をハンドリングしてきました。最初にショーに出た当時には、私たちは犬を銅像のように立たせ、ロボットのように振る舞うように教えられました。しかし、犬はショーイングすることを楽しんでいませんでした。
今の私のトレーニング方法は、元気よく活気がある時にご褒美を与えることをすべて基本としています。あなたが手を犬の上に置いて、すぐに服従しなさいというような態度をしたら、犬は意気消沈すると思います。

私は残す仔犬を自分で選ぶ時に、自然な状態ですばらしいスタンディグポーズに見える子にします。私は犬に私を見るようにトレーニングします。彼らは顔を上げない限りご褒美をもらうことはできません。
私たちはショーの時はいつもアルファベット順に並びます。私は自分の犬の後ろにいるスタッフとアイコンタクトを取って欲しくはありません。ベストインショーで並ぶ時、テリアグループのウィナーは退屈なトイグループとガンドッグの間に入ります。
私のエアデールは、私を見てきらめかなければならないのです!

Q9.貴方にとって、これまでに最も心に残る子は?
1975年に行われた百年祭のショーではイギリスのアーサー ロッジのジャッジの下、175頭のエアデールがエントリーしました。私はCh Old Iron Outlawで勝ち抜きました。しかし、ショーで他の牝犬を見て、私の犬よりも良かったと思う牝犬が6頭いました。それらはすべてTjuringa犬舎の繁殖犬でした。Ch Tjuringa Hurrahはベストインショー戦で私の犬を抜いて優勝しました。
このショーが私のブリーディングプランの転機となりました。私たちは血統ラインを変えることを決め、Tjuringa犬舎のキースとトリッシュ(一昨年来日)から実際にTjuringa Poshを譲ってもらいました。同じ頃、私たちはイギリスの Jean Campbellから美しいLoudwell Viewpointという牡犬をキースとトリッシュ夫妻と合同で購入しました。 

Tjuringa Poshは1ポイントも取れませんでした。彼女はその時エアデールとしては小さすぎましたが、PoshとViewpointとの交配は信じられない成功を収めました。私たちはついに誇りに思うような仔犬を繁殖したのです!彼女の最初のこどもたちはたった4頭でしたが、そのうち3頭がチャンピオンになりました。その1頭が私の最初の素晴らしい牡犬Ch Old Iron Highpoint、Rockyでした。 Rockyはもともとペットとして新しいオーナーのところへ行った子でした。私はいつも日中許す範囲内で彼を家に連れてきて、トリミングやショーイングの練習をしていました。彼の家は我が家から1時間も離れたところにあったので、4時間程のトリミングの他に4時間の送り迎えで、計8時間もの時間がかかりました。それは簡単なことではありませんでしたが、おかげで彼はいつも素晴らしいコンディションを保つことができました。
もし私がリングの中でおろおろしていたら、Rockyは興奮に震えて立っていたことでしょう。「おかあさん、しっかりしてよ!」と主張していたかもしれません。私たちはドッグショーでとても良い成績を収めました。彼の初めてのショーはオープンショーで、56頭の中で優勝しました。彼は足踏みすることなく勝ち続け、メルボルンロイヤルショーでは2回テリアグループで優勝し、数多くのロイヤルベストブリードを獲得しました。 また、オールブリードショーでのベストインショー、スポーティングテリアクラブでのベストインショー、他にもたくさんのエアデールテリアクラブのベストインショーをいただきました。1988年にはオーストラリアの200年祭の時のビクトリア州の代表になりました。
彼が最後にエアデールクラブのCCを取ったのは10歳の時でした。この間に私はRockyを打ち負かすような他の犬を繁殖できませんでした、しかし誰か他の人だってできていません!
これも言っておいた方が良いでしょう。PoshとEngCh Loudwell Whispersの2度目の子ども達では、4頭のチャンピオンを生み出しました。そのうちのIn Fighterはメルボルンロイヤルグループで優勝し、Outrageはビクトリアエアデールクラブショーで優勝し、メルボルンロイヤルショーで2度のベストテリアビッチを獲得しました。NZ & Aust Ch Old Iron Infra Redはパピー、ジュニア、中間クラスで、そしてニュージーランドナショナルではテリアグループで連続して優勝しました。

 

Q10.OLD IRON ラインをどのように確立したのですか?
70年代後半と80年代初めの多くのエアデールは26インチ(66センチ)を越えていました。そのため、正しいサイズのエアデールはしばしば小さく見えました。また、イギリスのLoudwellsのラインではコートに問題がありました。
それで、私たちはアメリカのデボンショー、ハットボローショー、モンゴメリ展で優勝したAm Ch Tartan Catch a Starの仔犬を私たちの繁殖に取り入れました。彼女はサイズとコートを改良するためには最高の牝犬でした。さらにAmCh BravoIronmanとScottshire Jack Flash Memoirの息子も手に入れることができました。PaulとJanice Clarkはすばらしいエアデールの牝犬を持っていて、メルボルンロイヤルショーでは私がハンドリングをしました。その犬の血統にはこれらすべての輸入犬が含まれており、彼らは交配の謝礼として牝を1頭選ばせてくれました。

その1頭であるTarahanga Beanz Meanz Heinzは次の素晴らしい繁殖犬となりました。彼女の最初のOld Iron Play For KeepsとのブリーディングではCh Old Iron Spill The Beanzを生み出しました。彼女は複数のエアデールテリアショーで優勝し、オールブリードショーでもベストインショーの栄光に輝き、スポーティングテリアショーでの準優勝、メルボルンではベストイングループと準優勝グループでの勝利を勝ち取りました。
私は彼女がとても好きでした。2度目のブリーディングでは、複のベストインショーを取ったCh O.I.Xtravertがいました。一方3度目のブリーディングでは、Rockyの記録を打ち破ったCh Old Iron Just Awesome(Justis)がパピークラスの時からオールブリードでの成功をスタートしました。Justisはメルボルンロイヤルで3回ベストインショーと2つのショーでグループの優勝に輝きました。また、キャンベラロイヤルショーではグループと準優勝グループで、アデレードでは2回の準優勝グループで勝利しました。さらに、スポーティングテリアショーや、たくさんのエアデールショー、オールブリードベストインショーで優勝しました。Justis は2000年のオーストラリア'Oz Dog'のリーディングテリアとなりました。

Justisは Rockyとタイプが非常によく似ています。彼らは両方ともサイズは24インチ(61センチ)で、動作は正確で健全。よくバランスが取れた構成で、素晴らしい頭と尾の保持をしていました。でも性格は違っていました。Justisは私が望むように尾を振り、きらきらと輝くようにいつも楽しそうにしていました。彼は今でもそうしています。

Q10.最強のエアデールMargaret Riverとは?
2年連続でモンゴメリー展でBOBを獲得したMargaret Riverが、如何に押しの強い赤ちゃんだったかを打ち明けましょう。Margaretは西オーストラリアのパースから3時間ぐらいのところにあるFermoy エステートワイナリーで生まれました。
私は彼女のオーナーに繁殖に適した良い牝犬を譲りました。彼らは交配相手にJustisの息子でキャンベルロイヤルショーで優勝したCh Old Iron Thorpedoを使いました。その仔犬たちは私のものとして登録され、ロンが彼らのところへ飛び、Margaretを選びました。

MargaretはJustis を呼んだ時も本当に私が彼女を呼んだかのように確実にいつもそばにいました。もしJerryに家に入るように呼べば、そこにいるのはまたMargaretなので混乱しそうでした。 彼女はいつもジュニアハンドラーのためにリングに上がりました。彼女の将来を変えた勝利は Karen Missenがハンドリングしたモンゴメリロイヤルショーのベストパピーイングループと、ジュニアハンドラーClaire Tylerがハンドリングしたスポーティングテリアとシュプリームテリアパピーでのジュニアインショーでしょう。
これらの優勝は3人のアメリカ人ジャッジによるもので、彼らはアメリカに帰って友人にこう言ったのです。「この牝犬は絶対買うべきだよ!」。そして私はTerrydales犬舎のパートナーであるMaripi Wooldridgeから電話を受けました。彼女は私たちがMargaretに望んでいることを尋ねました。ロンは即座に「エアデールテリアクラブオブアメリカでのベストインショーさ」と答えました。

Margaretの最初のモンゴメリー展での成功の後で、エアデールクラブを含むアメリカナショナルショーでの3回のベストオブブリード、デボンショーでベストインショーを獲得しました。これらは彼女を全米NO1エアデールに押し上げ、Maripiから彼女をリースすることについて多くの引き合いがありました。
2005年に私がウエストミンスターでMargaretのハンドリングをし、ベストインショーに輝いたのは感動に値するものでした。それから11月7日のオールブリードショーまでの10ヶ月間、有名ハンドラーのPeter Greenが彼女のキャンペーンをしました。この間、2回目のナショナルエアデールショーで優勝し、彼女の現在のレコードは32ベストインショーとなりました。
 
Q11.よい子を作るための繁殖のポイントは
私は最初にテンペラメント(気質)を考慮して繁殖するようにしています。これはそう簡単なことではありません。私の知る限り、気質面で劣る子はいつも何らかの問題を抱えています。
本質的にエアデールは2つの大きな問題があるようです。そのうちの1つは、オーナーを越えて自分がボスになり、時には支配しようとして唸ったりすることです。私は最初の繁殖でイギリスから入れた牡犬を使いました。8頭生まれた仔犬のうち2頭が生後6週間でもう唸っていました。私はそのうちのコントロールできる犬を1頭残しましたが、スタッドドッグとしてはあえて使いませんでした。そしてもう1頭は本当に扱いにくかったため、彼のオーナーの気持ちを傷付けました。
もう一つの問題は、エアデールは成熟するまでの間に、普段見たことのないものに対してひどく怯えた振る舞いをするというものです。カメラのフラッシュや、壊れた傘、ショーでの嫌な経験から回復できないエアデールのことを聞いたことがありますか?

エアデールの脳は、彼らのホルモンが成熟期に達するまで、思いがけないことに対して用意ができていないという事なんです。いったん植え付けられた恐れを、トレーニングで彼らから取り除くことはできません。
もしあなたがジャッジやブリーディングなど、何をするにしても、“気質”は非常に重要です。真のエアデールは押しつけがましいものなんです。彼らはあなたのやることは何でもじゃましようとしたがります。アメリカのRhonda Davisは、エアデールが何か覚えたことを3回やると飼い主が喜び、4回やったらもっと喜ぶということを、すぐに学ぶということを書いています。
オーストラリアにいる良い事の一つは、ショーの時にエアデールのオーナーだけでなく、違う犬種のオーナーもいっしょだということです。そのため、私たちはあらゆる種類の犬種に対する考え方に触れることができ、どれが私たちにとって役に立つかと学ぶことができます。
私たちはエアデールのオーナーがするべき事だけにとらわれる必要はありません。私たちにはいつも一番になろうと努力することを奨励する文化があります。私たちにとって、このエアデールという趣味のおかげで世界中に行き、素晴らしい犬と素敵な人々に出会える事は本当に素晴らしい事です。私たちはどこへ行っても自分たちが1歩前進するための新しいアイデアをいつも探し求めています。