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クラフト2004観戦記 杉本武巳
世界最大のドックショー“クラフト”が今年も3月4日から7日までの4日間、イギリスはバーミンガム市で開催されました。クラフトの公式ホームページによると、今年の総出陳頭数は2万1千頭以上、ビジターは12万人で昨年と同様な盛況ぶりでした。今回見事ベストインショーの栄冠に輝いたのは、ウイペットのCH. COBYCO CALL THE TUNE(牝)、リザーブ・ベストインショーは、スコッチテリアのCH. RAGLAN ROSE MAIDEN AT BRIO(牝)でした。

エアデールテリアが所属するテリアグループは、最終日の7日の日曜日に開催されました。幸運にも私は昨年に引き続き今年もクラフト見学をすることができました。今年のスケジュールは3泊4日の超過密スケジュールでしたが、この間、多くの友人たちとの再会を果たし、とても有意義な時間を過ごすことができました。

3月6日(土)
成田発の午後便で、同じATCJ メンバーの松原さんと共にヒースロー空港に降り立ち、そのまますぐに空港でレンタカーを借りて我が家のMapleの実家へと向かいました。親友の JAIDELD犬舎のMartin &Alaine Lockett夫妻宅への訪問はほぼ10ヶ月ぶりです。彼らと近くのパブへ行き、そこで夕食を共にしながら久しぶりの再会を楽しみました。今年はJAIDELD犬舎からの出陳はJAIDELD GYPSY LADY LUCK(Lucky)という今年3歳になる牝一頭だけですが、Luckyは我が家のメイプルと両親を同じとするすばらしい子で、昨年は2枚のCCカードを獲得しています。

3月7日(日)
今年のエアデールテリアは朝一番、9時からのスタートでした。エントリー数は92頭(実際は欠席があり80数頭)で、昨年とほぼ同じ数です。ショーの進行は、まず牡のグループから始めます。
ベテランクラスから始まり、以下パピー、ジュニア、ポストグラジエイト、リミット、オープンの各クラス順に比較審査を行い、最後にパピーを除く各クラス一席犬同士で比較審査を行いDOG CC とリザーブDOG CC を選出します。牡が一通り終わると次に同様な手順で牝の比較審査を行います。そして最後にDOG CC とBITCH CCで比較審査を行い本日のベストオブブリード(BOB )を決定します。
今年のクラフトのBOBは、Jokyl犬舎の CH GARLAND SWEET CAROLIN JOKYL(Bitch)、BOSは同じくJokyl犬舎の BRANDED JAZZ KING OF JOKYL でした。 Jokyl犬舎のクラフトでのBOB獲得は3年連続で、しかも今回はBOSともJokyl犬舎ということで、昔からいわれている “クラフトはJokyl”を、今年も実証した形となりました。
親友のMartinがハンドリングしたLucky は、Jokyl犬舎のGARLAND SWEET CAROLINと同じオープンクラスに出陳して2席に終わりましたが、その席次よりも彼女の素晴らしさをこの目で再確認することができ、私自身とても満足でした。このショーの模様はすべてVTRに取りましたので、ご希望の方は Airedale Terrier Club of Japan までご連絡ください。貸し出しいたします。

ショーが終了した後は、いつものとおりランチタイムです。出陳者達にとっては、これもまたお楽しみです。気のあった仲間同士集まってワインやビール、サンドイッチを片手に話が弾みます。わたし達もあちらこちらと顔を出し、昨年5月に行ったSouthern Countiesチャンピオンシップショー以来の再会のスターガス犬舎のLesleyやGus、Jokyl犬舎のMary、サレドン犬舎のJudith、ブランデッド犬舎のDabid、Crillee犬舎のJane、そして久々に会った Shadlian犬舎のKeith・・・などの多くの友人達。
クラフトは参加する人にとっても、また見学する人たちにとっても年に一度のお祭りです。この日ばかりは全国各地から犬も人も集まってきます。そして、見学者は世界中から集まってきます。参加者達の大半はいわゆる普通の人たちで、オーナーハンドラーばかりです。年輩者も多く、しかもご婦人が多い。リタイア後の生活を、愛犬達と一緒にめいっぱいエンジョイしている方も多くいらっしゃいます。 彼らを見ていていつも感心することは、犬の扱いがとても上手だということです。彼らはプロのハンドラーではありません。愛情はたっぷりですが、しかし毅然とした態度で実に堂々としています。彼らは決して犬をしかりません。しかし犬たちはとても生き生きしてハンドラーに従います。

ランチタイムも終わり、私たちはWillowの実家で親友のRobroyd犬舎のJanet&Tom Huxley達と合流しました。彼らは今日はエアデールではなくてロシアンブラックテリアのために来ていました。ロシアンブラックテリア オブ イングランドの会長であるTom達は、毎年ディスカバーDOGのために他のボランティア達とともに時間を過ごします。限られた時間でしたが一通りショッピングを楽しみ、ディスカバーDOGの会場の後かたづけを手伝い、夕方クラフト会場を後にして、そのまま松原さんと一緒にTomたちとHuxley家へと向かいました。Huxley家は昨年のクラフト以来一年ぶりの訪問です。部屋に入るなり昨年と同様、体重70kg近くもあるロシアンブラックテリアのお出迎えです。一年ぶりですが、私にとっては不思議なことにとてもそんな感じがしませんでした。いつ来ても暖かく私を迎えてくれる家庭。イギリスのもう一つの我が家。そんな表現がぴったりと当てはまるのがHuxley家です。

3月8日(月))
一晩ぐっすりと寝た後の朝の目覚めは快適でした。この日はJanet手作りのイングリッシュブレックファーストをいただき、少し休憩した後、Tomの案内で車で一時間ほど走ったところにある典型的なイギリスの田舎町へ行きました。その町にはとても古い大きな屋敷があるということで期待していきましたが、あいにくその日は休館日でしたが、代わりに年に何回かある牛の競り市が開かれていて、広場にはたくさんの露店が出ていました。小さな町が車と人であふれかえり、とても月曜日とは思えないほど活気にあふれていました。こんな場所には普通のの観光旅行では絶対来ることがないでしょう。これもまたいい経験でした。そこでのんびりと時間を過ごし、松原さん、Tomとランチを食べ、私たちは次の目的地、Winchesterへと向かいました。

3月9日(火)
Winchesterは歴史の町。この町の近くにクラフト3年連続BOB。そしてこれまでにエアデールテリアの世界で数々の記録を打ち立ててきたJokyl犬舎があります。私たちは昨年に引き続き今年もこのJokyl犬舎を訪問しました。私たちがJokyl犬舎に着いたのは9時と朝早くの訪問でしたが、Maryはクラフトの疲れもあるにもかかわらず、快く私たちの訪問を歓迎してくれました。
皆さん、“つうしん第24号”で紹介したMaryからのメッセージを覚えていらっしゃいますか?彼女はこんなことを書いています。
「たとえあなたがショーで勝てなくても、たいていの人たちは自分の犬たちと楽しいひとときを過し、そしてきっとそこで何か楽しいことを見つけることができるでしょう。全てが終わったあとは、結局あなたはあなたの最愛のエアデールテリアといっしょに家に帰るのです」。そうです。クラフト常勝の彼女にとってもJokyl犬舎は心安らぐ家なのでしょう。一昨日のクラフト会場での厳しい表情の顔と、今日、朝ここで見る顔は明らかに違って見えました。
Maryが自慢の愛犬を連れてきて、トリミングテーブルの上で見せてくれていた時に、BrandedのDavidやフィンランドから来ている手伝いの仔達が集まってきました。これまでに数々の記録を塗り替えてきた名犬Ch.Greenfield Captain Fantastic、今年のクラフトでBOBを獲得したCh、Garland Sweet Carolin Jokyl、そしてこれからの活躍が期待される若きホープ達をじっくりと見せてもらいました。ショーのリンクで見るのと、こうしてじっくりと間近で手に取ってみるのとではやはり大きな違いがあります。実際の重量感は手に取ってみないと分かりません。彼女独特のトリミングなど、なるほどな・・・て感じるところが色々とありました。

あいにくその日は午後からMaryの友人の一人が亡くなり、その葬儀に出かけることを事前に聞いていましたので、お昼前には失礼することにしました。彼女らに別れを告げたあと、Maryは思い出したように今年14才になる一頭の牝犬を連れてきてくれました。その子は黄色いセーターを着ていて、とても幸せそうな表情をしていました。そのセーターを着た老犬が1996年、クラフトでリザーブベストインショーを獲得した名犬Ch.This is My Song(Nan)でした。MaryとNanの幸せそうな表情がとても印象的でした。